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秩父コンミューンの伏流水を生きている―――市東さんの闘い

―共同代表からのアピール(反対する会・会報第2号より)

坂本進一郎(当会共同代表:秋田県大潟村農民)
Dscf2244_3  さて、三里塚の問題は空港問題ばかりでなく、農業問題でもあると思います。なぜ農業問題なのか。国家の横暴による土地取り上げの脅しを受け、農業をやれなくされているからです。国家が「国益」を持ち出す時、それは大企業の利益代弁であることが多いようです。つまり今の日本国家は、大企業の「仮面」をかぶった「権力者」なのです。

 「仮面」の正体は様々な巨大資本です。それは航空資本であり、自動車資本であり、巨大流通資本であったりします。三里塚の土地取り上げの要求者は航空資本であり、国家はそれを代弁しているにすぎない。具合の悪いことに、国家は暴力装置を持っています。一方では民主主義を唱えながら、どうにもならなくなると、暴力という物理力のキバを剥き出しにします。我々も大潟村の青刈り騒動で経験したし、今やそのキバは三里塚と市東さんの所に向かっています。

 自主性に基づく農民反乱 
 なぜ国家は、こんなことをするのか。大きな流れとしては、明治以来の殖産興業政策があると思います。普通、近代国家ができると途上国は経済のはずみをつけるため殖産興業を行うが、一応工業が発達すれば、次の段階として国民生活のボトムアップをはかる。農業も国の大事な柱として、政策に乗せるべきなのに、そうしなかった。農村は低賃金のプールとして利用されてきました。その結果、「女工哀史」や今日では「過労死」の悲劇が生まれています。農政学徒時代の柳田国男は、農業と工業の偏頗(へんぱ)な状態を憂慮して「農民の自立政策」を唱えたが、ほとんど無視されました。秩父コンミューンが反乱を起こしたのも、農民が生糸産業で成功しなかったのに松方デフレで潰されたことに怒ったからです。秩父コミューンは、「土着的性格」の強い自由民権運動を最大限に発揮し、農民の「自主性」をいかんなく示しました。まさか農民がこんな反乱をするとは思いもよらず、明治政府もびっくりしたことでしょう。その結果、秩父コンミューンは、徹底的に弾圧されることになります。自由民権運動がもう5年も続いたら、日本はもっと変わっていたかもしれません。

 農業問題は食料問題
 戦後も殖産興業策は継続され、殖産「興業」はむしろ、殖産「企業」に変質してきます。そのために農業はますます「企業」発展の踏み台にされます。農業近代化(大規模化、機械化、単品化)の国際分業論が要求されます。見本は大潟村ですが、大潟村のようにすれば、農村の人口は余ってきます。その余った労働力を都会に吸い上げ、高度成長を行いました。国際分業論によって、農業にとどめを刺したのは「戦後総決算」を唱えた中曽根臨調でした。彼は私的諮問機関である前川リポートで、アメリカに車、家電製品を買って下さい、その代わりに農業を差し上げます、と言ったのです。農業は今、人をさらわれ、作るべき作物を取り上げられ、ついに土地さえ取られようとしています。
 その意味で、三里塚の市東さんの闘いは、「自主性」のある闘いにおいて、秩父コンミューンに重なり合って見える、秩父コンミューンの伏流水を生きているように思います。
 農業の再生には、EU並に農業を国の柱と位置づけることと、消費者の理解が必要であろうかと思います。なぜなら、もはや農業問題は、食料の問題となったと言えるからです。

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